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2020年5月10日 (日)

母親の蔵書

 私の父親が本を読んでいるところは見たことがなかった。親に隠れて暗がりで小説を読んだために目を悪くした、という話を聞いたことがあるから、若い頃はそれなりに読んではいたのだろう。押川春浪、戸川幸夫などが好みだったそうな。

 母親のほうは、歳をとってからもよく本を読んでいた。読んだ本はほとんど始末してしまったようで、遺品を整理したときに出てきたのは数冊だけだった。履き古した足袋は、柳行李にあふれるほどいっぱいとってあったというのに……。

 残っていた本のほとんどは、戦後まもなくに出版されたもので、苦しい時代を反映してか装丁はかなり粗末な印象だ。試みに年代順に並べてみよう。

沙翁全集1 ハムレット(シェークスピヤ著 坪内逍遥訳 早稲田大学出版部)

Shakespeare

 坪内逍遥訳の『ハムレット』である。残念ながら初版ではなく、昭和4年発行の24版だが。戦前の本ということで、装丁はなかなかに豪華。カラーを含む口絵や、木版彫りだという挿絵も多数挿入されている。沙翁全集は、もう1冊、『アントニーとクレオパトラ』もある。これが全40巻そろっていたらねぇ……。

歯車(芥川龍之介 文藝春秋新社)

Akutagawa

 芥川龍之介の短編集。「歯車」のほか、「或阿呆の一生」「河童」「藪の中」など8編を収録している。戦後の復興のさなかと言える昭和22年刊。かなり素朴な印象の装丁だ。

太宰治作品集 第5巻 斜陽(太宰治 創元社)

Dazai

 昭和26年刊。一応ハードカバーながら、戦後の旧家の没落を描いた作品の内容に合わせたかのような、たそがれ気味の外観だ。紙の質も悪い。

現代世界文学全集20 嘔吐・他人の血(サルトル、ボーヴォワール著 佐藤朔、白井浩司訳 新潮社)

Sartre

 この本が蔵書にあったのは意外だった。海外文学を読むような人だとは思っていなかったので。昭和28年の初版。この時期までくると、装丁の質もかなり戻ってきているような。

漱石全集 第5巻 虞美人草(夏目漱石 岩波書店)

Soseki

 昭和36年の第6刷。初版も「もう戦後ではない」の昭和31年。布製のカバーがなかなかオシャレだ。

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