« 夢の超特急 | トップページ | グリスマンその後 »

2020年3月14日 (土)

ジャズ・ギターへの道

 マンドリン・オーケストラのブームに乗って順調に業績を伸ばしていたギブソンは、1922年にアーチトップ・ギターの歴史を塗り替えることになる新たなモデルを発表する。ご存知、マスター・モデルのL-5である。

  L-4からの主な変更点は、サウンドホールがオーバル(楕円)からf型に変わったこと。ネックとボディのジョイント位置が12フレットから14フレットに変わったこと。ブリッジが高さの調節のできるアジャスタブル・タイプに変わったこと、など。この時点では、ボディ・サイズはまだ16インチ幅のままだった。

L5

 当時のカタログの図版を拝借してきた。このカタログを読むと、上記のような改良点は、F-5マンドリンで効果が立証された独自開発の構造をギターに応用したものである--というようなことが書いてある。F-5が発売されたのも同じ22年なので、ほぼ同時期のプロジェクトと言えるのではないかと思うのだが、まずマンドリンありきだった当時の状況がうかがい知れるようで興味深い。また、fホールを採用した意図は、より大きな音量を得るため。14フレット・ジョイントはハイポジションでの演奏性を高めるためだったことも明記されている。

 ジャズ・エイジと呼ばれた20年代以降、ギターはより大きな音量を求められるようになっていく。管楽器やドラムと共演する機会が増えたことが大きかったのだろう。ジャズのコード楽器として急速に人気を高めていたテナー・バンジョー(伝統的な5弦バンジョーとは異なり、演奏スタイルはマンドリンに近い)に、音量の点でひけをとっていたことも、看過できないポイントだったと思われる。

 16インチ・ボディのL-5は、もともといちばん大きなサイズのギターだったのだが、さらに大きな音量を求めて、34年には17インチのアドバンスト・ボディへと変更される。これはフラットトップ・ギターで言えばJ-200に相当するスーパー・ジャンボ・サイズである(念のために書き添えておくと、34年の時点では、J-200もその前身であるSJ-200も、まだこの世に存在していない)。同じ34年には、さらに大きな18インチ・ボディのスーパー400も発売されている。ライバル・メーカーのエピフォンも18・1/2サイズのエンペラーを、ストロンバーグも19インチのマスター400を発売するなど、アーチトップ・ギター(≒ジャズ・ギター)の大型化競争は激化の一途をたどっていた。

 こちらのギターは、35年製のL-10(17インチ・ボディ)。 

L10t

L-10は、L-5の安価なバリエーションとして開発されたモデルの1つと言える。同種のモデルには、L-7、L-12がある。発表年に関しては諸説あるようだが、ジョージ・グルーン説を取れば、L-10(1929年)、L-12(1930年)、L-7(1932年)。比較的短い期間に、矢継ぎ早に投入されている。

 L-10も、もともとは16インチ・サイズで、ブラック・フィニッシュのシンプルな外観のギターだった。L-5と同じ34年に17インチ・ボディに変更されて、39年まで生産された。

 レッド・マホガニー・サンバーストのスプルース・トップ。メイプル・バック&サイド。マホガニー製のネックは、ミディアム・スケール(L-5よりもやや短め)な上に、フィンガーボードにはかなりきついアールがかけられていて、たいへん押さえやすい。

L10bind

 三角形のポジションマーク、チェッカー模様のトップ・バインディングなど、デザイン的にもなかなかユニークだ(正直、好みの別れそうなところではあるが……)。

L10bb

 何を隠そう、このギターはネットのオークションで落札したのだが、届いたときのコンディションはかなりひどかった。バックの塗装がボロボロだったのは想定内として、ネックの状態が想像のはるか斜め上を行くもので……。太めのネックを細く削り直そうと思い立ったのはいいけれど、途中で力尽きたものか、刃物の痕がそのまま残った円空仏のような無残な姿となっていたのだ(あまりのショックで写真を撮るのを忘れたのが、今となっては残念^^;)。

L10neck

 このままではとても弾けない。しょうがないのでサンドペーパーでせっせと磨いて、なんとか使える状態にまでプロファイリングし直した。無茶な成形でネックのバランスもおかしくなっていたため、こちらは修理に出してフレット音痴を矯正してもらった。苦労のかいあって、いまではかなりいい音で鳴るギターになっている。やれやれ。

L10peg

 チューニング・ペグは、メタル製のバタービーン・ノブが付いたグローバーのオープンタイプ。これも届いたときには、ネジが1つとれていた。マイナス・ネジじゃないとかっこ悪いので、楽器製作家御用達のスチュアート・マクドナルドから取り寄せて、めでたしめでたし……。

« 夢の超特急 | トップページ | グリスマンその後 »

楽器」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 夢の超特急 | トップページ | グリスマンその後 »