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2018年3月 5日 (月)

渋谷でカントリーのお勉強

 金曜日に鼻水が止まらなくなって(この歳で花粉症デビュー?)へこたれていたのだが、どうしても聴きたい講演があったので、昨日は渋谷まで出かけてきた。

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 music is musicのレクチャー・シリーズ「カントリー・ミュージック研究の新しい潮流」。講師の永冨真梨さんは、カントリー・シンガーで、現役の同志社大学の大学院生でもあるそうな。

 以下、個人的な覚書のつもりで。

 冒頭に紹介されたのは、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの映像だった。黒人のミュージシャンによるカントリー的なパフォーマンスを提示して、「白人の保守的な層のための田舎の音楽」というカントリー・ミュージックのステレオタイプなイメージがはたして正しいか?--と疑問を投げかける(彼らがカントリーのミュージシャンかどうかもかなりビミョーではあるのだけれど)。

 次に往年のオールドタイムのスター、チャーリー・プールを取り上げて、常にスーツ姿でばりっとキメていた、そしてミュージシャンになる前は紡績工場で働いていたプールが、いかに田舎者のイメージと異なっているかを説く。

 以下は地域ごとの特色の比較。ナッシュビルのグランド・オール・オープリーや、シカゴのナショナル・バーン・ダンスでは、田舎のイメージが前面に。テキサスで流行ったのは、ジャズ的な要素を持った洒脱なウェスタン・スイング。一方ロサンゼルスでは、サンズ・オブ・パイオニアーズのようなポップなカウボーイ・ソングが主流に。ケンタッキーを中心としたブルーグラスは、ストリングバンドのテクニカルな発展形。テキサスではペダル・スティール・ギターをフィーチャーしたホンキートンク・スタイルも花開く。

 そしてエルビス・プレスリーの大ブレイクを経て、1958年頃からナッシュビルへの集権化が始まり、ナッシュビル・サウンドが確立されるに至る。その過程で、プロデューサー、ソング・ライター、セッション・ミュージシャン、歌手……といったシステマチックな分業制も進む。

 ナッシュビルに対するアンチテーゼとも言うべき動きには、カリフォルニアのベーカーズフィールド・サウンドや、テキサスのアウトロー・カントリーなどがあった。

 近年では、元ツェッペリンのロバート・プラントとアリソン・クラウスのデュオ・プロジェクトや、ソウル・シンガーのウィリアム・ベルのアメリカーナ・アルバムなど、ジャンルを超えたコラボレーションが目立つ。クリス・シーリー、ヨーヨー・マらのゴート・ロデオ・セッションズもその一例として紹介された。

 ここで冒頭の疑問に戻って、保守的、伝統的な価値観に縛られているとされるカントリー・ミュージックのイメージをくつがえすための例がいくつか提示された(そんな話をしているさなかに、外の通りをヘイト・スピーチのデモが通り過ぎていったのがシュール^^;)。

 最後にQ&Aの時間がとられ、「どこまでがカントリーでどこからがカントリーではないのか?」というような話に。個人的にはこのやり取りがたいへん面白かった。

 以下は私見になるのだけれど、ジャンルを限定するという行為自体にまず限界があるような気がする。「カントリー」にこだわるから話がややこしくなるのであって、もっと幅広く、ポップ・ミュージックの中のナッシュビルのポジションという視点に切り替えると、かなりすっきり見えてくるんじゃないかと。詳しく書くと長くなりそうなので、以下省略……。

 それと、カントリー・ミュージック的な史観では、たとえば、カーター・ファミリー、ジミー・ロジャース、チャーリー・プールあたりもカントリーのカテゴリーに分類するようだけれど(ちなみに私自身は異なる考えを持っている)、その直系の子孫とも言うべき、ウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ジョーン・バエズ、ボブ・ディランといったフォーク・リバイバルの人たちが、むしろリベラルな思想を表明していたことはどう説明すればいいのだろう? もしかしたら、ジャンルから思想が生まれているんじゃなくて、思想からジャンルが分けがされている(それも多分に思い込みを含みつつ……)側面もあるのでは? このあたりから攻めると、案外面白い結論が得られそうな気もする。

 終演後、このレクチャー・シリーズのアドバイザーをされている大和田俊之先生に久々のご挨拶。かたじけなくも、講師の永冨真梨さんに紹介していただいた。わ~い! これからはカントリーの話は永冨さんに教えていただくことにしよう。

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