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2017年10月 7日 (土)

都市論から音楽史へ

 希代の音楽プロデューサー、牧村憲一さんの著作だったら『ニッポン・ポップス・クロニクル1969-1989』や『「ヒットソング」の作り方』も読んだ。どちらも当事者ならではの「いま明かされる真実」が満載で面白かったけれど、今度の本はそれに輪をかけて面白い。なによりも随所で語られる都市論がいい。発展する都市のエネルギーが音楽の進化に関わっていく様子がいきいきと描かれていて、ワクワクさせられた。

Sibuya

 『渋谷音楽図鑑』(大田出版)。牧村憲一、藤井丈司、柴那典の3氏の共著となっているけれど、実質的な語り手は牧村さんだろう。敬体文にときおり常体文が混じる独特の文体は、話し言葉をそのまま書きおこした結果ではないかと思われる。

 第一章の章題は「公園通り」、第二章は「道玄坂」、第三章「宮益坂」、第四章「原宿」……と地域ごとに分けて、渋谷がどのような過程を経て音楽の街に変わっていったかが解き明かされる。まえがきの結びに「僕はやっと自分史と音楽史を重ね合わせることができました」とあるが、音楽史と自分史が並行し、ときには交差していくのみならず、その間隙に郷土史も絡んでくる。この重層構造がなかなかに刺激的だ。

 私にとって、渋谷はそれほど身近な存在というわけではないのだけれど、それでも道玄坂のヤマハやブラックホーク、宇田川町のクラブクアトロ、タワーレコードといったなじみの名前が出てくると、さまざまな思い出がよみがえってきて懐かしい気分にさせられた。本書には書かれていないけれど、ほとんど原宿よりの裏通りにOAKというお店もあったっけ。ここは、珍しいレコード、輸入の音楽書や、ちょっとした楽器類、それに料理の本まで置いてある楽しい店だった。そういえば、D管のペニー・ウイッスルをまとめて買ったのもこの店だったな。

 第五章「渋谷系へ」までが、渋谷生まれの牧村さんの視点から語られる渋谷の音楽史。第六章「楽曲解析」、第七章「二一世紀」はがらりと趣を変え、3人の著者による鼎談となる。

 六章では、はっぴいえんど「夏なんです」、シュガー・ベイブ「DOWN TOWN」から、コーネリアスの「POINT OF VIEW」まで、都市型ポップスの代表曲をピックアップして、曲の構成を解析しようと試みている。正直、ここは食い足りないというか、全体の流れをさまたげているような気がしないでもなかった。とはいえ意欲的な試みであることは間違いないので、次作でのさらなる展開を期待したい。

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