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2017年10月 3日 (火)

生態系の維持のために何ができるか?

 ほとんど書名で持っていかれた感がある。本書は、恒常性を維持するために自然界に存在する調節のメカニズムについて語っている。もちろんこのルールはタンザニアの国立公園にのみ適用されるわけではなく、我々の周りのごく身近な環境にも、さらには身体の中の細胞レベルにも存在するものなのだが、あえて「セレンゲティ」と限定したところがミソだ。これだけで、とたんにイメージが鮮明になってくる。

Serengeti

 『セレンゲティ・ルール 生命はいかに調節されるか』(紀伊国屋書店 ショーン・B・キャロル著 高橋洋訳) 著者は進化発生生物学(エボデボ)の権威だそうだが、本書のテーマはむしろ生態学に傾いている。興味深いのは、環境を安定化するための調節のメカニズムには、マクロな生態系のレベルからミクロな遺伝子のレベルに至るまで、共通する規則があるという点だ。

 第1部では、恒常性と食物連鎖の概念について。第2部では、人の体内で生産される酵素の量や、コレステロールのレベルがいかに調節されているか。また、調節の不具合によって生じるガン細胞の異常な増殖の例について。第3部では、生態系レベルでの調節の仕組みと、その規則が破られたときに生まれる悲惨な状況、さらに破綻した生態系を回復する試みについて語られる。

 生物学者的な記述は思いのほか少なく、むしろジャーナリスティックな視点で、調節のメカニズムに関わるさまざまな発見をした先人たちの業績や人となりがまとめられていて、とても読みやすかった。絶滅の危機に瀕している多数の生物種たちを救うことは、めぐりめぐって人類を救うことになる--こうした著者の主張には、おおいに耳を傾ける価値があるのではないか。

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