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2017年6月11日 (日)

鈴木カツさんのこと

 鈴木カツさんに初めてお目にかかったのは、20代半ばの頃だった。

 ソフトハウスを辞めて『ブルーグラス・リバイバル』誌で働くようになってから、しばらく経っていたと思う。編集長の佐々木仁さんが、「そろそろ築地の大将に挨拶しといたほうがいい」みたいなことを言いだした。

 もちろんそれ以前からカツさんの書かれた記事はよく読ませていただいていたし、音楽評論のかたわら築地でエニーオールドタイムというロック・バーを経営していらっしゃることも存じ上げていた。はっきり言われたわけではないけれど、きっと「きちんと仁義を切っておくように」というお達しなんだろうと受け止めた。

 すでに話は通っていたと見えて、「何月何日に行くように」という仁さんの指示どおりに単身築地のお店を訪ねると、カツさんが「よくきたね」と歓迎してくださった。ウィンナー・コーヒーとビールをご馳走になったのをよく覚えている。

 おそらくすいている時間帯だったのだろう。お客さんはほかになく、2人だけで長い間話しこんだ。……と書くと聞こえはいいけれど、こちらはほとんど聞き役で、レイアウトのダメ出しをされ、書いた記事のダメ出しをされ……と説教されるばかりだった。すべて納得したわけではないけれど、いただいたアドバイスは私なりに咀嚼して、その後に活かしたつもりでいる。そのときは思いもつかなかったけれど、いま振り返ると、どこの馬の骨かわからない若造の文章を読んで下さっていたことに感謝してしかるべきだったのかもしれない。

 返り際に「またおいで」と言っていただいたものの、そもそも外で飲む習慣がないもので、どういう顔をしてお訪ねすればいいものか見当もつかず(自閉症気味でもあるのでね^^;)、結局1人では一度も訪れることはなかった。

 その後は遠くからご活躍をお見受けするばかりでいたのだが、つい先ごろ、偶然Facebookで再会し、それから何度かメッセージをいただいたりもした。その中には「いっしょに本を出そう」という、望外のお話まであったのだが、実現することが叶わなくなって残念だ。

 私にとってカツさんは、雲の上の存在であり、常にコワい人でもあった。晩年にいただいたメッセージは、意外なほど柔和で、これまでの印象が間違ったものであったことを気づかされたような気がする。もっと早く再会していたらよかったな……。

 いまさらではありますが、コーヒーとビールご馳走様でした。ご冥福をお祈りします。

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