ポストカードの誘惑6
チター・バンジョー奏者の絵葉書はたくさんあるけれど、今度は少し毛色の変わったミュージシャンをご紹介しよう。カイザー髭も凛々しいジョゼフ・ブルという人だ。
ばっちり正装でキメいてて、なんとなく堅物そうな印象でもあるが、見た目に違わぬクラシックの音楽家だったようで、「オペラティック・バンジョーイスト」と称されていた。なんでもバッキンガム宮殿で演奏したこともあったとか。
1868年生まれのイングランド人。ベス・L・オスマンと同い年ながら、演奏スタイルはまったく異なる。音源を聴く限りでは、全編フラットピックを使ったトレモロ奏法で、コードにメロディを乗せるようにして弾いている。ソロのフラットピッカーとしては、かなり早い例と言えるのではないか。
初レコーディングは、おそらく1909年。ワグナーの『タンホイザー』、ベルディの『イル・トロバトーレ』、グノーの『ファウスト』といったオペラのレパートリーから6曲録音している。
「O Tender Moon」は、歌劇『ファウスト』から。オリー・オークリーの音源とアップ元が被っていて不本意ではあるけれど、YouTubeではこれ1曲しか見つからなかったため、ご勘弁願いたい。YouTube以外のデジタル音源もあまり存在していないようで、私が聴けたのは、この曲を含めて3曲しかない。
もっとも3曲聴けば充分というか、オスマン、エプス、オークリーといったクラシック奏法のフィンガーピッカーたちに比べると、正直、いささか退屈なプレイだ^^; 同じフラットピッカーなら、20年代以降に登場するテナー/プレクトラム・バンジョーのプレイヤーのほうをお奨めしたい。
この絵葉書が作られたのは、英国南イングランドSouth Norwood。発売年は不明。宛名面には「OPERA ON THE BANJO」なるキャッチ・コピーと、ブルの連絡先を記した印が押されている。おそらくは物販用、もしくは宣伝用のグッズだったのだろう。
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