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2017年6月21日 (水)

ポストカードの誘惑8

 20世紀初頭に作られた魅力的な絵葉書の数々をご紹介し、あわよくば書籍の出版にまでこぎつけよう--ということで始めたこのシリーズも、早や8回め。英国製の絵葉書が多いため、どうしても英国のミュージシャン中心のラインアップになってしまうのだが、このあたりで米国のミュージシャンも取り上げておいたほうがよさそうな気がする。

Postcard08

 ハンク・キーン&ヒズ・レイディオ・ギャング。典型的なヒルビリー・ファッションのグループだ。1人だけスーツを着て、でんと構えているギターのおじさんがリーダーかと思いきや、主役のハンク・キーンは脇でピアノを弾いている若いハンサム・ボーイのほうである。

 ハンク・キーンは1930年代に米東海岸のニューイングランド地方で活躍したヒルビリー・スターで、生まれはルイジアナながら、その後ニューヨーク、イリノイ、フロリダ、ケンタッキー、ボストン……と各地を転々としている。「レイディオ・ギャング」というバック・バンドの名前からも想像がつくように、30年代はラジオの仕事がメインだった。ラジオ放送のために録音した音源は現在も残っており、CD化もされている。自作の甘いカントリー(ヒルビリー)・ソングのほかに、「リケッツ・ホーンパイプ」のようなニューイングランド風のフィドル・チューンも演奏しているのが興味深い。

 この時期のヒルビリー歌手らしくジミー・ロジャースの影響も顕著で、この曲ではロジャースゆかりのブルー・ヨーデルを披露している。

 絵葉書は米国製で、切手には1934年の消印が押されていた。「連日WGQに出演中。この夏はハンク・キーンのテント劇場とラジオ・レビューをお見逃しなく」--という写真の脇の宣伝文句を見ると、バンドのプロモート用のグッズだったようだ。

 バンジョー奏者が持っているのは、B&Dのテナー・バンジョーだろう。B&Dは20年代から30年代にかけて一世を風靡したバンジョー・メーカーだった。

 スーツのおじさんのギターは、サンバースト・トップに、アジャスタブル・ブリッジ、トラピーズ・テールピース、エレベーテッド・ピックガードという仕様のようで、1932~33年頃に作られたギブソン・ニック・ルーカス・スペシャルによく似たデザインと言える。だとしたらペグヘッドに入っているはずのフルール・ド・リス(ユリの紋章)のインレイが見られないのが気になるが……。

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