ポストカードの誘惑7
めげずに頑張る、絵葉書本出版促進プロジェクト第7弾。
この絵葉書はとくにお気に入りの1枚だ。小柄な黒人少年が、2本のバンジョーをバックに踊っている。このポーズを見ると、やはりタップ系のダンスかな? クレジットには「EARLE AND EARLE AND JIMMY」とある。おそらく両脇のバンジョー奏者がアール&アール、真ん中のダンサーがジミーだろう。正装の白人プレイヤーとダンサーの黒人少年という組み合わせが、さりげなくほっこりとくる。演奏の音まで聴こえてきそうだ。
写真には「Earle & Earle」の直筆サインと、「Yours faithfully」というメッセージが添えられている。これは手紙の締めの常套句でもある。米英語っぽい言い回しだそうだが、絵葉書自体は英国製だ。直訳すれば「忠実なるあなたのしもべ」くらいのニュアンスだろうか? 日本語でしっくりくる文句が浮かばないのだけれど、思いっきり意訳をして「お客様は神様です」なんてのはどうかしら?^^;
バンジョーはノーマルなオープンバックの5弦。ペグヘッドやフィンガーボードのインレイはかなり凝っている。A・C・フェアバンクス、あるいはそれを引き継いだベガあたりの上位モデルのデザインのようだ。引きの写真で細部まで確認できないため断定はしかねるものの、ここは時代性も鑑みてフェアバンクスのバンジョーに5000点! フェアバンクスのバンジョーだったら、日本にも目の色を変える人が(少しは?)いそうだ。
残念ながらこのトリオの素性はまったくわからないのだが、これとは別にユージン・アールというバンジョー・プレイヤーの絵葉書もあって、この人がアール&アールの片割れによく似ている。苗字も同じだし、同一人物の可能性がありそうだ(ちなみにそちらの絵葉書ではチター・バンジョーを弾いている)。
ユージン・アールの人となりは、絵葉書のキャプションである程度わかる。その紹介文には、「50ポンドを賭けて、南アフリカ、ヨハネスブルグにある野生の4頭のヌビア・ライオンの洞窟で演奏した」とある。え!?
また、ピカデリーというロンドンのレーベルから「A Banjo Vamp / A Desert Breeze」というSPレコードを出しているのも確認できた。レーベルに「電気録音(マイクロフォンを通した録音)」とわざわざクレジットが入っているところを見ると、1920年代半ば頃の録音だろうか? 「A Banjo Vamp」は、『BANJO - FINGER TRICKS ORIGINAL RECORDINGS 1923 - 1941』といったコンピレーション・アルバムにも収録されているようだ(amazonで視聴もできる)。ここでは、フラットピックでメロディを弾きながら合間にコード伴奏も入れるスタイルで演奏している。カーター・ファミリー・ピッキングを思わせるような素朴でよいプレイだとは思うけれど、これで「ザ・バンジョー・キング」を名乗るのは(絵葉書にそう謳ってある)、ベス・L・オスマンと比較してどうなんだろう……?
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