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2017年6月

2017年6月30日 (金)

キュウリの馬

 七夕が近づくと、母親がキュウリやナスに割り箸をさして飾っていたのを思い出す。「七夕や なすやきゅうりが みな転ぶ」--という謎の呪文のような短冊を添えて。

 子ども心に、そこはかとなく不気味に感じたのを覚えている。

 お盆にキュウリの馬やナスの牛を作って飾る風習があるというのを知ったのは、ずいぶんあとになってからだ。なんでも自己流(マイペース^^;)で通す人だったから、七夕とお盆をごっちゃにして一度にすませていたのかな? いかにも、うちの母親にふさわしい思い出ではあるけれど……。

 

  夏越の輪くぐり 大祓い

  七夕 夜空のすす払い

  天の川には 笹ぼうき

  茄子や胡瓜が みな転ぶ

2017年6月25日 (日)

森の記憶

 隣の中学校の工事も今日は休み。緑化プロジェクトは順調に進んでいるようだ。もはや中学校の校庭とは思えない。

Syokuzyu2

 どうなることかと心配していた校門脇のヒマラヤスギも、無事に移植された。やはり根回しをしているように見えたのは、移植の準備だったんだな。少しでも残してもらえるかと思うと、なんとなく救われたような気分にはなるものの、それでも切り倒される木はあるわけで……。

 

雨の記憶 ぽつりぽつり
風の記憶 びゅーびゅー

化石の森で
遠ざかる足音を聞いた

満ちては欠け
寄せては返す時の営み

すべての答は目の前にある
人はただ それに気づかないだけ

2017年6月21日 (水)

ポストカードの誘惑8

 20世紀初頭に作られた魅力的な絵葉書の数々をご紹介し、あわよくば書籍の出版にまでこぎつけよう--ということで始めたこのシリーズも、早や8回め。英国製の絵葉書が多いため、どうしても英国のミュージシャン中心のラインアップになってしまうのだが、このあたりで米国のミュージシャンも取り上げておいたほうがよさそうな気がする。

Postcard08

 ハンク・キーン&ヒズ・レイディオ・ギャング。典型的なヒルビリー・ファッションのグループだ。1人だけスーツを着て、でんと構えているギターのおじさんがリーダーかと思いきや、主役のハンク・キーンは脇でピアノを弾いている若いハンサム・ボーイのほうである。

 ハンク・キーンは1930年代に米東海岸のニューイングランド地方で活躍したヒルビリー・スターで、生まれはルイジアナながら、その後ニューヨーク、イリノイ、フロリダ、ケンタッキー、ボストン……と各地を転々としている。「レイディオ・ギャング」というバック・バンドの名前からも想像がつくように、30年代はラジオの仕事がメインだった。ラジオ放送のために録音した音源は現在も残っており、CD化もされている。自作の甘いカントリー(ヒルビリー)・ソングのほかに、「リケッツ・ホーンパイプ」のようなニューイングランド風のフィドル・チューンも演奏しているのが興味深い。

 この時期のヒルビリー歌手らしくジミー・ロジャースの影響も顕著で、この曲ではロジャースゆかりのブルー・ヨーデルを披露している。

 絵葉書は米国製で、切手には1934年の消印が押されていた。「連日WGQに出演中。この夏はハンク・キーンのテント劇場とラジオ・レビューをお見逃しなく」--という写真の脇の宣伝文句を見ると、バンドのプロモート用のグッズだったようだ。

 バンジョー奏者が持っているのは、B&Dのテナー・バンジョーだろう。B&Dは20年代から30年代にかけて一世を風靡したバンジョー・メーカーだった。

 スーツのおじさんのギターは、サンバースト・トップに、アジャスタブル・ブリッジ、トラピーズ・テールピース、エレベーテッド・ピックガードという仕様のようで、1932~33年頃に作られたギブソン・ニック・ルーカス・スペシャルによく似たデザインと言える。だとしたらペグヘッドに入っているはずのフルール・ド・リス(ユリの紋章)のインレイが見られないのが気になるが……。

2017年6月18日 (日)

父の寝顔

 両親とはずいぶん歳が離れていたので、物心ついた頃には父親はもう老人と言っていいような年齢だった。

 父親がこの世の不幸のすべてを背負ったような顔をして寝ていることに気づいたのもこの頃だ。なんて苦しそうな表情なんだろうと思ったのを覚えている。父親の事情はよくわからなかったけれど、生きていくのは楽なことじゃないんだろうなと、漠然と感じていた気がする。

 あれは老いについて考えさせられた最初の機会だったのかもしれない。ことさらに意識したつもりはないのに、気がついてみたら老いをテーマにした歌をいくつも書いていた。もしかしたら、あの体験が少しは影響したのだろうか?

 

父さんは
この世の全部の不幸を
背負ったような顔して寝てる
額に大きなしわをよせて
口をへの字に曲げながら

怖い夢でも見てるのかな?
おなかが痛いのかな?
生きているのがつらいのかな?
歳をとるのが苦しいのかな?

こんなにゆがんだ顔してること
きっと気づいてないんだろうな

  僕はじっと見てるだけ
  ずっとずっと見てるだけ

怖い夢が終わるといいね
おなかが痛くないといいね
生きていくのが幸せならいいね
歳をとっても楽しければいいね

  僕はじっと見てるだけ
  ずっとずっと見てるだけ

いつか僕も
こんな顔して寝るようになるのかな?

2017年6月17日 (土)

中学校に森林がやってくる?

 以前に書いた隣の中学校の建て替え工事は、しばらく前から校舎の解体が始まっているようだ。校門の前にあった桜の木は、やはり工事の車両の出入りのジャマになったようで、結局根元から切られてしまった。

 解体が始まったといっても、我が家からは校舎の姿は見えないため、とくに目立った変化はないかと思っていたら、一昨日までグラウンドだった場所が、いきなり林に変わっていたのには驚いた!@@;

Syokuzyu

 気づいたのは昨日の朝のことだ。どうやら一昨日1日で植樹をしたものと思われる。小田原攻めの石垣山城かよ!(あそこは逆に1日で木を伐採したんだっけ)

 あわててWebで検索してみたら、ちょっとした大学のキャンパスというか、立ち入り自由の公園みたいになるらしい。植栽の管理にやけに気を使っているのには気づいていたけれど(桜が1本切られちゃったとはいえ)、こんなことを計画していたのか……。これほど大がかりなプロジェクトとは夢にも思っていなかった。

 学校のスペースを地域とからめて有効活用するというのは、近年のトレンドなのかな? 豊島区にはもともと緑が少ないので、緑化を推進するのは悪くない気がする。工事の進捗が少しだけ楽しみになってきたかも。

2017年6月16日 (金)

ラジオ三昧の1日

 朝からインターネットでテルライド・ブルーグラス・フェスティバルのライブ中継を聴いている。いまさっき、本日のトリのテルライド・ハウス・バンド(オールスターのセッション・バンド)の演奏が始まったところだ。やっぱテルライドはいいね!

 昨日は麻布十番のスタジオでFMラジオ「A・O・R」の収録があった。午後7時の入りだったため夕食抜きで臨んだのだが、やはりこの状況で1時間近くしゃべるとおなかが減る。これで使われるのはほんの一部なんだよな~。

 梅雨とも思えないカラッとした天気の中を歩いたせいか、最初はガラガラ声しか出なくてあせった。喉の調子が気になるとしゃべりにも影響が出るようで、ずいぶん噛んでしまったよ。なかなかプロのようにはいかんな……。

 今回のテーマは、フラットピッキング・ギター。前回のフィンガーピッキング・ギターに引き続いての特集だ。フラットピッキングにはかなりの思い入れがあるので、それなりに気合を入れて選曲もした。

 アメリカン・ルーツ・ミュージックを対象にした企画ということで、ブルーグラス系を中心に、ロックやケイジャン、ブルースなども取り混ぜて。放送時間の関係で、涙をのんでカットした曲も多いとはいえ、とりあえず大御所のドック・ワトソン、クラレンス・ホワイトから始まって、新世代のブライアン・サットン、ティム・スタッフォードあたりまでまで、なるべくたくさん選んだつもり。このほかに誰がかかるかは、放送を聴いてのお楽しみということで……。

 放送日は少し時間が空いて、6月29日(木)午後8時からの予定です。電波の届く地域の皆様におかれましては、なにとぞよろしく。

2017年6月15日 (木)

ポストカードの誘惑7

 めげずに頑張る、絵葉書本出版促進プロジェクト第7弾。

Postcard07

 この絵葉書はとくにお気に入りの1枚だ。小柄な黒人少年が、2本のバンジョーをバックに踊っている。このポーズを見ると、やはりタップ系のダンスかな? クレジットには「EARLE AND EARLE AND JIMMY」とある。おそらく両脇のバンジョー奏者がアール&アール、真ん中のダンサーがジミーだろう。正装の白人プレイヤーとダンサーの黒人少年という組み合わせが、さりげなくほっこりとくる。演奏の音まで聴こえてきそうだ。

 写真には「Earle & Earle」の直筆サインと、「Yours faithfully」というメッセージが添えられている。これは手紙の締めの常套句でもある。米英語っぽい言い回しだそうだが、絵葉書自体は英国製だ。直訳すれば「忠実なるあなたのしもべ」くらいのニュアンスだろうか? 日本語でしっくりくる文句が浮かばないのだけれど、思いっきり意訳をして「お客様は神様です」なんてのはどうかしら?^^;

 バンジョーはノーマルなオープンバックの5弦。ペグヘッドやフィンガーボードのインレイはかなり凝っている。A・C・フェアバンクス、あるいはそれを引き継いだベガあたりの上位モデルのデザインのようだ。引きの写真で細部まで確認できないため断定はしかねるものの、ここは時代性も鑑みてフェアバンクスのバンジョーに5000点! フェアバンクスのバンジョーだったら、日本にも目の色を変える人が(少しは?)いそうだ。

 残念ながらこのトリオの素性はまったくわからないのだが、これとは別にユージン・アールというバンジョー・プレイヤーの絵葉書もあって、この人がアール&アールの片割れによく似ている。苗字も同じだし、同一人物の可能性がありそうだ(ちなみにそちらの絵葉書ではチター・バンジョーを弾いている)。

 ユージン・アールの人となりは、絵葉書のキャプションである程度わかる。その紹介文には、「50ポンドを賭けて、南アフリカ、ヨハネスブルグにある野生の4頭のヌビア・ライオンの洞窟で演奏した」とある。え!?

 また、ピカデリーというロンドンのレーベルから「A Banjo Vamp / A Desert Breeze」というSPレコードを出しているのも確認できた。レーベルに「電気録音(マイクロフォンを通した録音)」とわざわざクレジットが入っているところを見ると、1920年代半ば頃の録音だろうか? 「A Banjo Vamp」は、『BANJO - FINGER TRICKS ORIGINAL RECORDINGS 1923 - 1941』といったコンピレーション・アルバムにも収録されているようだ(amazonで視聴もできる)。ここでは、フラットピックでメロディを弾きながら合間にコード伴奏も入れるスタイルで演奏している。カーター・ファミリー・ピッキングを思わせるような素朴でよいプレイだとは思うけれど、これで「ザ・バンジョー・キング」を名乗るのは(絵葉書にそう謳ってある)、ベス・L・オスマンと比較してどうなんだろう……?

2017年6月13日 (火)

FMラジオのフィンガーピッキング・ギター特集

 週末はFMラジオ「A・O・R」のための選曲、そして資料集め。次はフラットピッキング・ギターの特集ということで、ブルーグラス系の音源をまとめて聴いた。とはいえブルーグラス一辺倒というわけにもいかないから、いろいろ混ぜようとするとどうしても曲数が足らなくなる。ふ~。頭が痛い^^;

 以前に書いたように、5月25日(木)の放送はフィンガーピッキング・ギターの特集だった。オンエア・リストは以下のとおり。

  20:02 Happy Good Morning Blues / Bruce Cockburn
  20:07 Blind Arthur’s Breakdown / Blind Blake
  20:09 Cannonball Rag / Merle Travis
  20:14 I Like To Sleep Late In The Morning / David Bromberg
  20:17 The Double Planet / Michael Hedges
  20:22 Vaseline Machine Gun / Leo Kottke
  20:25 Kathy’s Song / Simon & Garfunkel
  20:30 Love Blues / Keb’ Mo’
  20:33 I Shall Be Releasd / Happy Traum
  20:38 Nobody’s Sweetheart / Chet Atkins
  20:40 Oh, Susannah / James Taylor
  20:42 Hot Time In The Old Town Tonight / Missisippi John Hurt
  20:46 Cincinnati Flow Rag / Reverand Gary Davis

 落としたはずのサイモン&ガーファンクル「Kathy’s Song」は、時間があまったものか、めでたく復活した。

 ブラインド・ブレイクやゲイリー・デイビスのラグタイムから、フォーク、カントリー、ブルース、シンガーソングライター、ニュー・エイジ……など、わりとバラエティに富んだ構成になったのではないか。タッピングのマイケル・ヘッジス、スライドのレオ・コッケあたりは、かなりの変化球ではあるけれど、全体のバランスを考えるとこれでよかったのではないかと思う。

 さて、フラットピッキング・ギター編(ただしアメリカン・ルーツ・ミュージックに限る)はどうなりますことやら……。

2017年6月11日 (日)

鈴木カツさんのこと

 鈴木カツさんに初めてお目にかかったのは、20代半ばの頃だった。

 ソフトハウスを辞めて『ブルーグラス・リバイバル』誌で働くようになってから、しばらく経っていたと思う。編集長の佐々木仁さんが、「そろそろ築地の大将に挨拶しといたほうがいい」みたいなことを言いだした。

 もちろんそれ以前からカツさんの書かれた記事はよく読ませていただいていたし、音楽評論のかたわら築地でエニーオールドタイムというロック・バーを経営していらっしゃることも存じ上げていた。はっきり言われたわけではないけれど、きっと「きちんと仁義を切っておくように」というお達しなんだろうと受け止めた。

 すでに話は通っていたと見えて、「何月何日に行くように」という仁さんの指示どおりに単身築地のお店を訪ねると、カツさんが「よくきたね」と歓迎してくださった。ウィンナー・コーヒーとビールをご馳走になったのをよく覚えている。

 おそらくすいている時間帯だったのだろう。お客さんはほかになく、2人だけで長い間話しこんだ。……と書くと聞こえはいいけれど、こちらはほとんど聞き役で、レイアウトのダメ出しをされ、書いた記事のダメ出しをされ……と説教されるばかりだった。すべて納得したわけではないけれど、いただいたアドバイスは私なりに咀嚼して、その後に活かしたつもりでいる。そのときは思いもつかなかったけれど、いま振り返ると、どこの馬の骨かわからない若造の文章を読んで下さっていたことに感謝してしかるべきだったのかもしれない。

 返り際に「またおいで」と言っていただいたものの、そもそも外で飲む習慣がないもので、どういう顔をしてお訪ねすればいいものか見当もつかず(自閉症気味でもあるのでね^^;)、結局1人では一度も訪れることはなかった。

 その後は遠くからご活躍をお見受けするばかりでいたのだが、つい先ごろ、偶然Facebookで再会し、それから何度かメッセージをいただいたりもした。その中には「いっしょに本を出そう」という、望外のお話まであったのだが、実現することが叶わなくなって残念だ。

 私にとってカツさんは、雲の上の存在であり、常にコワい人でもあった。晩年にいただいたメッセージは、意外なほど柔和で、これまでの印象が間違ったものであったことを気づかされたような気がする。もっと早く再会していたらよかったな……。

 いまさらではありますが、コーヒーとビールご馳走様でした。ご冥福をお祈りします。

2017年6月 9日 (金)

ポストカードの誘惑6

 チター・バンジョー奏者の絵葉書はたくさんあるけれど、今度は少し毛色の変わったミュージシャンをご紹介しよう。カイザー髭も凛々しいジョゼフ・ブルという人だ。

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 ばっちり正装でキメいてて、なんとなく堅物そうな印象でもあるが、見た目に違わぬクラシックの音楽家だったようで、「オペラティック・バンジョーイスト」と称されていた。なんでもバッキンガム宮殿で演奏したこともあったとか。

 1868年生まれのイングランド人。ベス・L・オスマンと同い年ながら、演奏スタイルはまったく異なる。音源を聴く限りでは、全編フラットピックを使ったトレモロ奏法で、コードにメロディを乗せるようにして弾いている。ソロのフラットピッカーとしては、かなり早い例と言えるのではないか。

 初レコーディングは、おそらく1909年。ワグナーの『タンホイザー』、ベルディの『イル・トロバトーレ』、グノーの『ファウスト』といったオペラのレパートリーから6曲録音している。

 「O Tender Moon」は、歌劇『ファウスト』から。オリー・オークリーの音源とアップ元が被っていて不本意ではあるけれど、YouTubeではこれ1曲しか見つからなかったため、ご勘弁願いたい。YouTube以外のデジタル音源もあまり存在していないようで、私が聴けたのは、この曲を含めて3曲しかない。

 もっとも3曲聴けば充分というか、オスマン、エプス、オークリーといったクラシック奏法のフィンガーピッカーたちに比べると、正直、いささか退屈なプレイだ^^; 同じフラットピッカーなら、20年代以降に登場するテナー/プレクトラム・バンジョーのプレイヤーのほうをお奨めしたい。

 この絵葉書が作られたのは、英国南イングランドSouth Norwood。発売年は不明。宛名面には「OPERA ON THE BANJO」なるキャッチ・コピーと、ブルの連絡先を記した印が押されている。おそらくは物販用、もしくは宣伝用のグッズだったのだろう。

2017年6月 8日 (木)

汚部屋に麒麟

 明け方に見た夢。

 ずっと掃除していない雑然とした部屋。うずたかく詰まれた紙束の中からゴキブリやゲジゲジが出てきて、壁を登っていく。あわててスリッパを手にしてパンパンと叩くが、もぐら叩きのようできりがない。今度は平べったい虫が跳び出してきた。こいつも同じ目に会わせてやろうと近づくと、半透明な麒麟のような姿をしている。きらきら光るクリスタルのような身体に、唐草模様(あるいはラーメン丼の渦巻き?)がびっしりと……。

                        

 裁判所の一室でマキタスポーツのような風貌の男を吟味している。「人も虫も同じこと。情に流されることなく、罪を犯した人間に相応の罰を与えてきた」と語るマキタスポーツ。言うことに筋が通っている。惜しい人物ではあるけれど、その理屈に従えば同様に厳しく処罰しなければならない。さてどうする?

2017年6月 6日 (火)

ポストカードの誘惑5

 絵葉書本出版促進プロジェクト第5弾。そろそろ本気を出して、皆様お待ちかね(?)のバンジョー・プレイヤ-を取り上げることにしよう。

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 オリー・オークリーは、英国を代表するバンジョー奏者で、米国のベス・L・オスマン、フレッド・ヴァン・エプスと並び称されるようなクラシック・バンジョーの巨匠と言える。

 この写真では紳士然とした姿をしているけれど、別の絵葉書ではピエロ(ただし現代のサーカスなどでおなじみのクラウン風ではなくて、より伝統的なフランスのスタイル)に扮していたりもする。このあたりの事情については、またあらためて書ければとも思うが、ピエロのコスプレは、英国にバンジョーを普及させた最大の功労者とも言うべきクリフォード・エセックスにまでさかのぼる、英国バンジョー・プレイヤーの伝統だったのだ。

 オークリーが手にしている楽器は、英国製のチター・バンジョーだ。チター・バンジョーについても書きたいことはたくさんあるのだが、ひとことでまとめれば、アメリカで生まれた5弦バンジョーが英国で独自の進化をとげた楽器--ということになる。オークリーはキャリアの初期の頃を除き、ほぼ生涯を通じてこの楽器を使い続けたという。ちなみに4弦のテナー・バンジョーは5弦バンジョーよりずっと歴史が浅く、ベガが1908年に発売した製品が最初の例だそうな。

 オークリーは早熟の天才だったようで、10歳そこそこの1890年代に早くもプロ・キャリアをスタートさせている。初レコーディングの時期もオスマンとあまり変わらない。とはいえ、1886年生まれ(87年説もあり)ということで、1868年生まれのオスマンや1878生まれのエプスよりも下の世代になる。

 オークリーのレパートリーは、当時流行のラグタイム、ダンス・チューン、ミンストレル・ショー起源のヒット曲、クラシックの小品など。慢性関節リュウマチで1930年に引退するまでの35年間に、500曲以上の録音をしたというから、その人気のほどがうかがえる。その演奏スタイルは、オスマンやエプスと同じように、当時の主流だったクラシック・ギター風の指弾きだった。

 「Whistling Rufus(口笛吹きのルーファス)」は1917年の録音。ニューヨークのバンジョー奏者、ロジャー・スプラングも60年代に同じ曲をレコーディングしているが(リード・ギターはドック・ワトソン)、このオークリーの演奏がソースだった可能性もありそうだ。そう思いたくなるくらい両者のアレンジには相通じるところが多い。特筆すべきは、3フィンガー・ロールのようなフレージングが出てくることだ。のちのブルーグラス・バンジョーを思わせるようなスタイルが、すでにこの時点で存在していたとは……。

 ところで、直筆サイン入りのこの絵葉書には版元の社名は入っていない。「写真撮影WHEELER & HADDOCK」というクレジットがあるだけだ。おそらくファンに販売するためのグッズとして、オークリー自身が製作したものではないかと思う。

2017年6月 5日 (月)

明治神宮参拝

 暑くもなく寒くもない、梅雨入り前のからっと晴れた1日。ふと思い立って明治神宮に参拝してきた。

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 銅版屋根の葺き替え工事中とかで、奥手の拝殿はシートで覆われていた。シートに拝殿の実物大の写真が印刷されていて、実際の姿を偲べるように配慮されている。

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 南参道から横道に逸れて、睡蓮の咲く南池へ。

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 折りよく菖蒲田は花盛り。

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 なにかと話題の清正井(きよまさのいど)にも寄ってみた。何を隠そう、訪れるのはこれが初めてだ。ほんとうに鏡のようにきれいな水なんだね……。

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 社殿近くの参道には、奉納されたワインの樽もズラリ。オイシソ~?

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 参拝した後は北参道を抜けて代々木方面へ。木漏れ日の影が美しい。久しぶりに訪れたけれど、やはり神宮の森の空気感は素敵だ。

2017年6月 3日 (土)

ポストカードの誘惑4

 まだまだ続く絵葉書本出版促進プロジェクト第4弾。

 絵葉書でもアーケード・カードのように有名人の肖像写真(日本風に言えばプロマイド)を扱ったものは多かった。バンジョーを手にした女優の絵葉書もそこそこネタはあるのだが、あえてマンドリンを弾くZena Dareをピックアップしてみた。

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 おそらく、「誰?」ではなくて「デア」と読むはず。英国の著名な女優兼歌手……だそうだけれど、私はこの写真を見るまで知らなかった^^; 『ピーターパン』の舞台でティンカーベルを演じたこともあったという。『ピーターパン』の初演は1904年、ロンドン・ウエスト・エンドのデューク・オブ・ヨークス劇場だったそうだが、そのときのキャストかどうかは確認できなかった。ちなみに初めてフライング(宙乗り)の演出がなされたのは、1954年のブロードウェイだそうなので、ゼナ・デア自身は、ぶら下げられて空を飛んだりはしていないと思われる。

 この絵葉書は英国製で、版元はグラスゴー&ロンドンのMILLAR & LANG, Ltd.。発売年は不明だ。アーケード・カードのピンナップ・ガールに比べると、明らかに布の量が違っているけれど、これはこれで悪くない(何の話をしてるんだ?)。……というか、20世紀初頭の女優の絵葉書なんて、たいていこんなものなのだ(例外もないではないけれど、それは書籍用にとっておくことにする)。

 手にしているマンドリンは、日本でもよく見かけるボウルバックのナポリ・スタイル。テールピースのデザインやトップのインレイの装飾など、そこそこ上級のモデルだと思われる。

 ところで、この絵葉書をピックアップする気になった最大の理由は、カラー写真になっていたことだ。これまでの例を見ていただければ一目瞭然なように、20世紀初頭には、すでにカラー印刷はごくありふれた技術になっていた。ところが、カラー写真はまだそのレベルに達していなかったようで、絵葉書の写真は基本的にモノクロだ。ただし、手彩色でカラー化したものは少なくなかった。

 中には元の写真をそこねてしまっているような粗末な例もあるのだが、この絵葉書はていねいな仕事で、上品な色使いがたいへん美しい。よく見ると、フリルのついたロングドレスのすそにイヌが寄り添っている。

2017年6月 2日 (金)

ポストカードの誘惑3

 絵葉書本出版促進プロジェクトの第3弾。少し趣を変えて、前回載せたエレン・クラップサドルの絵には興味のなさそうな層……もっとはっきり書くと、すくすくと成長してセクシーになったロリータのほうが好み^^;という層を意識してみた。

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 妖艶なおねーさんが持っているのは、オープンバックのテナー・バンジョーのようだ。装飾はわりと地味め。テナー・バンジョーでリゾネーターがついていないということは、1910年代くらいに作られた楽器だろうか?

 実はこのカードは絵葉書ではなくて、アーケード・カードに分類される。版元のExhibit Supply Companyは、シカゴ近郊にあったアミューズメント・マシンのメーカーで、遊園地やアーケード街のような人の集まる場所に設置されるゲーム機類を製造していた。この会社の大ヒット商品が、コインを入れてガチャポンするとさまざまな意匠のアーケード・カードが出てくるという自販機だったのだ。

 アーケード・カードの販売は1910年代に始まって、全盛期は30年代から40年代。とくに人気が高かったのは、野球選手、ボクサー、プロレスラーといったスポーツマンや、映画スター、それから民族衣装のネイティブ・アメリカンの写真など。もちろんセクシーなおねーさんたちのカードもたくさん売れた。

 そんなセクシーショットの1枚がこれだ。楽器はあくまでも添え物ではあるけれど、美女が楽器を持つと絵になるということで、バンジョーが用意されたものと推察される。バンジョーがおしゃれな小道具として使われているのが、この時代ならではの現象と言えそうだ。おねーさんのレトロなファッションも、時代を物語ってはいるけどね。

 ポストカードが切手を貼って郵送することを前提に作られているのに対し、アーケード・カードは純粋にコレクションの対象で、裏には何も印刷されていない。とはいえ、一部には最初からポストカードとして作られたものもあったようだ。

2017年6月 1日 (木)

カセットテープ時代 Part2

 前作が好評だったようで、続編の『カセットテープ時代 Part2』(音楽出版社)が新たに発売された。めでたいことである。

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 ここだけの話、最初にパート2の企画をうかがったときには、はたしてネタが続くものかどうか心配していたのだけれど、どうやら杞憂ですんだようだ。往年のカセットテープの人気ランキングに始まり、TDK、東芝の取材記事、ラジカセやヘッドフォンステレオの名機の紹介、さらにはカセットの興隆と関わりの深い貸レコード店、FM雑誌、国民的ラジオ番組など、盛りだくさんな内容で、なかなか面白かった。個人的に注目しているマキタ・スポーツさんのインタビューまで載ってるし……。

 私はインタビュー記事を2本と、カセットテープ・ギャラリーの原稿を書かせていただいた。カセットテープ・ギャラリーは、パート1で紹介しきれなかった製品やバージョン違い、色違いなどを集めたもの。中には初めて見るような珍品もあって楽しく仕事ができた。

 これとは別に、人気ランキング特集用のアンケートも書かされたのだけれど、てっきり巻末のほうに小さな活字でひっそり載せられるものかと思っていたら、統計処理もされない生原稿のままドーンと目立っていて驚いた。これじゃまるでいっぱしの識者みたいジャン……。まあ、読む人はほとんど気にしないだろうから、いいか。

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