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2017年6月 6日 (火)

ポストカードの誘惑5

 絵葉書本出版促進プロジェクト第5弾。そろそろ本気を出して、皆様お待ちかね(?)のバンジョー・プレイヤ-を取り上げることにしよう。

Postcard05

 オリー・オークリーは、英国を代表するバンジョー奏者で、米国のベス・L・オスマン、フレッド・ヴァン・エプスと並び称されるようなクラシック・バンジョーの巨匠と言える。

 この写真では紳士然とした姿をしているけれど、別の絵葉書ではピエロ(ただし現代のサーカスなどでおなじみのクラウン風ではなくて、より伝統的なフランスのスタイル)に扮していたりもする。このあたりの事情については、またあらためて書ければとも思うが、ピエロのコスプレは、英国にバンジョーを普及させた最大の功労者とも言うべきクリフォード・エセックスにまでさかのぼる、英国バンジョー・プレイヤーの伝統だったのだ。

 オークリーが手にしている楽器は、英国製のチター・バンジョーだ。チター・バンジョーについても書きたいことはたくさんあるのだが、ひとことでまとめれば、アメリカで生まれた5弦バンジョーが英国で独自の進化をとげた楽器--ということになる。オークリーはキャリアの初期の頃を除き、ほぼ生涯を通じてこの楽器を使い続けたという。ちなみに4弦のテナー・バンジョーは5弦バンジョーよりずっと歴史が浅く、ベガが1908年に発売した製品が最初の例だそうな。

 オークリーは早熟の天才だったようで、10歳そこそこの1890年代に早くもプロ・キャリアをスタートさせている。初レコーディングの時期もオスマンとあまり変わらない。とはいえ、1886年生まれ(87年説もあり)ということで、1868年生まれのオスマンや1878生まれのエプスよりも下の世代になる。

 オークリーのレパートリーは、当時流行のラグタイム、ダンス・チューン、ミンストレル・ショー起源のヒット曲、クラシックの小品など。慢性関節リュウマチで1930年に引退するまでの35年間に、500曲以上の録音をしたというから、その人気のほどがうかがえる。その演奏スタイルは、オスマンやエプスと同じように、当時の主流だったクラシック・ギター風の指弾きだった。

 「Whistling Rufus(口笛吹きのルーファス)」は1917年の録音。ニューヨークのバンジョー奏者、ロジャー・スプラングも60年代に同じ曲をレコーディングしているが(リード・ギターはドック・ワトソン)、このオークリーの演奏がソースだった可能性もありそうだ。そう思いたくなるくらい両者のアレンジには相通じるところが多い。特筆すべきは、3フィンガー・ロールのようなフレージングが出てくることだ。のちのブルーグラス・バンジョーを思わせるようなスタイルが、すでにこの時点で存在していたとは……。

 ところで、直筆サイン入りのこの絵葉書には版元の社名は入っていない。「写真撮影WHEELER & HADDOCK」というクレジットがあるだけだ。おそらくファンに販売するためのグッズとして、オークリー自身が製作したものではないかと思う。

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