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2016年8月 6日 (土)

パンチ・ブラザーズの夜

 ブルーグラスのコンサートを見て、時代が変わりつつある過程をリアルタイムに体験しているんだ、と感じたことは何度かある。たとえば、ピーター・ローワンwithレッド・ホット・ピッカーズ。レッド・ホット・ピッカーズは日本ツアーのために急遽名乗ったバンド名で、その正体は、アンディ・スタットマン(マンドリン)、トニー・トリシュカ(バンジョー)、ロジャー・メイソン(ベース)というニューヨークの鬼才たちだった(フィドルのリチャード・グリーンは別格扱いで、特別ゲストとして参加した)。

 ピー・ターローワンは、そのあとマーク・オコーナー(フィドル、マンドリン)、ジェリー・ダグラス(ドブロ)、トッド・フィリップス(ベース)をバックに来日したときのパフォーマンスもすごかった。

 さらにサンフランシスコで見たニュー・グラス・リバイバル、2度めの来日となったデビッド・グリスマン・カルテット(最初のクインテットでの公演は見ていない)、ベラ・フレック&フレクトーンズ……。どれも強烈な印象が残っている。

 そしてパンチ・ブラザーズだ。2016年8月5日。ブルーノート東京の1stショー。1日2ステージの3日連続公演だが、チケット代が払えなくて、そのうちの1回しか見られなかった。情けない……。

 ボーカル、マンドリンのクリス・シーリーは、ニッケル・クリークで来日したときに見て以来。あのときは、超絶技巧のマンドリン少年がすっかり青年らしくなっていたのに感銘を受けたものだが、今回はさらに歳を重ねて貫禄がついてきた。バンジョーのノーム・ピケルニーは、ジョン・コーワン・バンドで来日したときに、まだ若いのにバンド全体を取り仕切っている姿に輝かしい未来を感じた。クリス・エルドリッジは、インファマス・ストリングダスターズでギターを弾いていた頃から注目に値した。早い話が、ものすごいミュージシャンの集合体だ。

 自由席のチケットだったけれど、幸いなことにステージから2列めの席に座ることができた。やや脇のほうとはいえ、クリス・シーリーの姿がよく見える位置だ。おかげで細かい指の動きもよくわかった。

 ステージにはコンデンサー・マイクが1本だけ。初日&2日めのステージの様子はネットでもチェックしていたので、驚きはしなかったものの、それでもインパクトはかなりのものだった。ブルーグラスのライブで近年よく見られるこのオールド・ファッションなスタイルを、パンチ・ブラザーズも採用していたとは……。楽器もプラグインしていない完全な生音で、すべてのボーカルと楽器の音(ウッド・ベースだけは例外)を1本のマイクでまかなっていた。そんなに単純なアンサンブルでもないのにな。

 いろいろ見方はあるだろうとは思うけれど、やはり彼らはクリス・シーリーのボーカルをフィーチャーしたバンドなのだと感じた。シーリーのマンドリンも、もちろんブルーグラスの要素は残っているものの、歌をサポートする伴奏を第一義に考えている。弾き語りでも充分いけそうなスタイルで、これはなかなかに刺激的だった。自分でもいろいろ試してみたい気分になった(ん? いい度胸してるなって?)。

 歌をメインにすえたストリングバンド・ミュージックとしては、おそらく当代随一。とはいえ、この音楽でブルーグラスの編成である必要があるかどうかについては、正直よくわからない。これからしばらく長考してみたいと思う。

 実は、メンバーのインタビューができないかと思って少し動いてみたのだけれど、私の実力不足で実現できなかったのは残念だ。まあ、実現したらしたで、クリス・シーリーさんの本音を聴くのはたいへんだったかもしれないけれど……。

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