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2016年6月22日 (水)

音楽フェス騒乱考

 フジロック・フェスティバルにSEALDsのメンバーが出演するという発表を受けて、「ロックに政治を持ち込むな」という批判が起きた。

 60年代以降の(ニュー・)ロックの歴史を振り返ってみれば、政治的なメッセージ(より限定して反体制的なメッセージでもいい)を発信するミュージシャンはたくさん存在していたわけで、そうした事実までを否定しようとするのは、さすがに無理があるだろう。これが「フジロックに政治を持ち込むな」という主張であれば、少しは理解できなくもない。とはいえ、そもそもこれまでのフジロックが政治的に中立なイベントだったのかというと、必ずしもそうとは言い切れないようだ。

 今回のフジロックに限らず、主催者の思惑と聴衆の思いは、いつも微妙に異なっていたりするもので、その食い違いがトラブルにまで発展したケースも少なくない。そのあたりの事情を少し検証してみよう。

第5回ニューポート・フォーク・フェスティバル
 1965年7月25日

 ボブ・ディランがロック・バンドを従えてステージに立ち、これに不満を抱いた聴衆が演奏を中止させる。観客側の主張をひとことでまとめれば「ニューポートにロックを持ち込むな」である。当時のフォーク・ファンにとって、ロックは打倒すべき商業主義の象徴、あるいは体制側の音楽だったと言えるのではないか。その後のロックの歩みを考えると、皮肉な話ではあるが。

ウッドストック・フェスティバル
 1968年8月15日~18日

 ウッドストックで起きたのは、イデオロギーの対立ではない。主催者側の入場ゲートの管理の不手際で、チケットを持たない群集が退去してなだれ込んだことが問題となった。騒乱を回避するために、主催者はフリー・コンサートの宣言をする。つまり観客側の主張は(もしあったとしたら)、「タダで見せろ」^^; もちろん大規模なコンサートを開催するにはそれなりの資金も必要となるし、ミュージシャンを無料で出演させるわけにもいかない。ムチャな要求と言わざるを得ないが、ウッドストック以降、このセコい「あわよくばタダで見てやろう」という思惑が、商業主義の批判と結びついて、ある種の正義のようになり、音楽フェスの主催者たちを苦しめることになる。

フェスティバル・エクスプレス
 1970年

 ウッドストック以降の混乱の様子をよく伝えているのが、フェスティバル・エクスプレスの記録映画だ。このイベントは、列車の車両を借り切ってロック・ミュージシャンたちを運び、カナダを横断しつつ各地でコンサートを開く、という画期的な試みだったのだが、行く先々で「フリー・コンサートにしろ」と主張する集団と衝突することになる。観客側の主張は、やはり「タダで見せろ」なのだが、やや理論武装が進んで、「ロック・コンサートは無料でなければいけない」という形に進化した。ここでも商業主義反対の思想が見える。

オルタモント・フリー・コンサート
 1969年12月6日

 時期はやや前後するが、ウッドストック以降のフリー・コンサートの流れは、同じ年のオルタモントで早くも破綻している。カリフォルニア州のオルタモント・スピードウェイで開催されたローリング・ストーンズをメインとしたフリー・コンサートで、警備を担当していたヘルス・エンジェルスによって観客の1人が殺害されるという事件が起きたのだ。この悲劇の主たる原因は、主催者側の準備不足、力量不足だったと言わざるを得ない。20万人にも及ぶ聴衆をコントロールするには、よほどの覚悟がなければいけなかったということだ。ともあれ、この事件を境に、盛り上がっていた大型コンサートのブームは一時下火となる。

第3回全日本フォーク・ジャンボリー
 1971年8月7日~9日

 71年の中津川フォーク・ジャンボリーの顛末は、『ベルウッドの軌跡』という本にも書いたので、詳しくはそちらを参照していただきたい(と宣伝^^; 宣伝ついでに、Amazonじゃなくてお近くの本屋さんから注文していただけるとモア・ベター)。ひとことでまとめると、2日めの夜に起きた騒動でコンサートは中止になった。騒動の原因はいろいろ考えられるのだが、ベ平漣が以前からジャンボリー粉砕を主張していたという話もある。だとすれば、反体制的な傾向を持つグループ同士の、いわば内ゲバだったということだ。騒動を起こしたグループの言わんとするところをざっくりとまとめれば、「商業主義反対」。「フォークに商業主義を持ち込むな」という主張は、今年のフジロックをめぐる動きと好対照と言えるだろう。

第3回春一番コンサート
 1973年5月5日~6日

 73年の春一番コンサートのトラブルの発端は、主催者側が当時まだ日本語のオリジナル曲を歌っていなかった憂歌団の出演を拒否したことだったと聞く。いわばマネージメントのトラブルが招いた騒動ということだ。う~む……(その後、春一番と憂歌団は和解)。

 こうやってまとめてみると、正直、つまらないことが原因で騒動になっているケースが多いという印象だ。当事者になると冷静でいられなくなる意持ちもわからないではないけれど、できればみんな仲良くハッピーに。せっかくの音楽フェスなのだからね。

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