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2016年6月19日 (日)

父の日

 歳が離れていたせいもあるだろうが、父親とはうまく話がかみ合わないことも多かった。

 たとえば、いっしょにテレビを見ていても、ほとんど話が通じない。

 子どもの頃に、こんなドラマがあった。水商売の女に、若い純情な男が恋をする。女は男を手玉にとっているつもりだったのに、次第に心を引かれ、本気で好きになってしまう。やがて男は世間に認められて……。いまにして思えば、『椿姫』のプロットを意識した筋立てだったのだ。

 女は自分が男に釣り合わないと思うようになり、わざと裏切ったふりをして身を引く。男は大成功して、新聞に大きく取り上げられる。その記事を目にして、うれし泣きをする女。

 なかなかよいシーンだと思って見ていたら、父親が「ざまあ見ろ!」と言い出した。私がポカンとした顔をしたからか、さらに詳しく解説をしてくれようとする。「この女はロクでもないヤツでな。男を騙して捨てたんだ。その男が成功したもんだから、悔しくて泣いてるんだよ」

 ええっと……。そのとき私はもう中学生になっていただろうか? 小中学生にもわかるようなこのベタなストーリー展開を、どうやったらこれだけ思いっきり取り違えられるんだろう? 脚本家も演出家も浮かばれないな。何かの都合で最終回は見られなかったように記憶しているので、結局父親がこの誤解を解く機会はなかったはずだ。

 実はこういうことはたびたびあった。やはり私が小学生の頃、西部劇のきれいなおねーさんが、「私はあなたに賭けてみたいの」と男に告げたときに、父親ははたと膝を叩き、「いいか、お前、よく覚えておけ。アメリカ人というのはな、何にでも金を賭けるんだ」

 バラエティ番組も、父親の魔の手からは逃れられなかった。人気の女性歌手(ちなみに山本リンダさんではありません)がヘソ出しルックで登場したときは、急に怒り出し、「この番組はふざけている! 笑わせようと思ってヘソを出すとはなんたること!」だって。

 そういえば、お笑い番組はほんとに嫌ってたな。人を笑わせようとするのがマジ許せなかったみたいで……。そういう父親の気持ちはわりと理解できるのだけれど、あのヘソ出しに限っては、当時のNHKとしてはせいっぱいのサービスだったと思うよ……。

 そんな父親のことを、しばらく前に歌にしたことがあった。どこかで紹介したような気もするけれど、父の日にあらためてもう一度。

  おやじのこと 思い出してたんだ
  2人で電車を見に行った頃
  陸橋の上 肩車で
  赤羽線が通るのを 見てた

  よくキャッチボールもしたっけ
  なんで やらなくなっちゃったんだろう?
  いっしょに酒を飲んだことも
  数えるほどしかなかったしね

    おやじのこと 思い出したら
    あの頃にまた 戻りたくなった
    いまでは何も 残ってないけど
    あの家にまた 帰りたくなった
    この歳になって そんなこと思うなんてな

  ちょっとズレてたおやじだったな
  ずいぶん 歳も離れてたし
  でも今にして思えば
  あれでずいぶん遠慮してたみたい
  気を使うことなんてなかったのに

  生意気ばかり言ってごめんね
  自慢できる息子でもなかったし
  あんなにいっしょに暮らしてたのに
  何もしてあげられなくて ごめん

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