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2015年6月

2015年6月30日 (火)

モンテクリストの懺悔

 誤解された話の続きでもう1つ。たいていの現代の日本人男性は、痴漢に間違われたらどうしようというような心理的プレッシャー--いわば痴漢冤罪コンプレックスを持っているのではないかと思う。心理学ではすでにいい用語があるのかもしれないけれど、これを仮にモンテクリスト・コンプレックスと呼ぶとして(ギリシャ神話でいわれなき罪を被った登場人物を探そうとしたのだが、よい例を思いつかなかったので、「岩窟王」のモンテ・クリスト伯ことエドモン・ダンテスの名を借りることにした)、このコンプレックスは、実はけっこうバカにならないものではないかと思う。

 幸いなことに、まだ痴漢でつかまった経験はないけれど、「あ、痴漢に間違えられたんじゃないかな」と感じたことは2度ある。一度めは学生の頃。夜遅くなったので、路地裏の暗い道を早足で歩いていたときのこと(我が家は門限がうるさかったので、帰りが遅くなるとひやひやものだったのだ)。前方を女の人が歩いている。ほとんどシルエットしか見えないけれど、体型から判断するとそれほど若くもなさそうだ。その女の人がチラチラとこちらを振り返るではないか。ん? もしかして怪しい男に見えるのかな? そっちも気持ち悪いんだろうけど、そう思われてるかと思ったら、こっちだってすっごく気持ち悪いのよ! だらだらと続く一本道で、人気はなく、脇道へ逸れようもない。こうなったら一気に加速して追い抜こう(門限を気にしてあせっていたので、ゆっくり歩く選択肢はなかった^^;)。そう考えてさらに足を速めると、向こうもそれに気がついたらしく、何度もこちらを振り返りつつ、どんどん早足になる! いや、違うんだってば! これじゃいつまで経っても追い抜けないではないか。この「追いかけっこ」が終わるまで、ずいぶんかかったような……。実際にはたいした時間じゃなかったはずなのだが、とにかく長く感じた。

 もう1回はもっと単純かつヤバい状況で、電車から降りようとしたときに、前にいた女の人のおしりを、思いっきりベロ~ンとなでる形になってしまった事件。天地神明に誓って、意図した結果ではなかったのだけれど、不幸な偶然が重なってしまったとしか言いようがない。お気の毒にもおしりを触られてしまった女性は、ピンクのボディコン・スーツを着た、がっしりとした体型の方で、年の頃は50~60歳くらい? あの服の色と、気持ち悪さにぶるぶると身震いされていた様子は、いまでもよく覚えている(いつもは他人の服装なんてまったく目に入らないのに)。わざとではなかったにせよ、たいへん申し訳なく思っております。すみませんでした。

 そのときは、あまりのことに呆然として、お詫びをすることもできなかった。そのことはいまでも悔いている。もし、あのとき「痴漢!」と声をあげられて、つかまっていたら、その後の人生はどうなっていたのだろう? 「わざと痴漢をやっているのかそうでないのかは、やられた本人にははっきりわかる」とおっしゃる方は多いようだけれど、私の経験からすると、必ずしもそうは言えないのかもしれない。いまでも思い出すと冷や汗の出るモンテクリスト・コンプレックス……。最初は軽い話にするつもりだったのだが、いざ書きはじめたらやけに重たい。なんだかどよーんとした気分になってしまった……。

2015年6月27日 (土)

I Wanna Hold Your Hand

 Webのニュースで、全米で同姓婚が事実上の合法化という記事を読んだ。同性愛に関しては、とくにこれという意見は持っていない。自分が言い寄られでもしない限り(それはちょっと困る^^;)、気にすることもないと思う。

 とはいえ、それを嫌う人の心理も、まあ、わからないではない。ずいぶん前に、こんなことがあった。目の不自由なピアニストの方とライブをやって、いっしょに帰ったときの話だ。駅までの細い道を、私が先導して手を引きながら歩いていた。前から妙齢の女の子(20歳前後?)がやってきて、一瞬対峙する形になったのだが、そのときの娘さんの表情といったら……。あれほど憎しみのこもった目で女の人ににらまれた経験は、生涯を通じてほかに一度もない。

 事態はすぐに飲み込めた。そのときの私は長髪で、右手にはバイオリン、左手でうしろの男の手を握っている。うしろの男の顔はよく見えなかったのだろうが、いがぐり頭のあたりが、いかにもそれらしい。要するに、同性愛のカップルと間違われてしまったらしいのだ。

 はて、誤解を解くべきか?と思案する暇もなく、2人の男と女の子はすれちがってそれっきり。なんとなく釈然としない気分だけが残った。そんなことで行きずりの人を嫌わなくってもねぇ……。

2015年6月18日 (木)

なぎら健壱さんのD-35

 小川町のシンコーミュージック本社で、なぎら健壱さんのインタビュー。編集部からいただいたテーマは、かつてのフォーク・ブームとアコースティック・ギターのブームとを絡めてお話をうかがうように--というもの。ちょうどその頃の事情を調べているところでもあったので、ほいほいとお引き受けした。

 ……のはいいのだけれど、初対面のご挨拶をさせていただいたなぎらさんは、どこかご機嫌斜めのご様子。まあ、ある程度覚悟はしていたので^^;、「質問が悪い」と教育的指導を受けつつも、なんとか機嫌を直していただいて、無事終了にこぎつけた。所要時間は1時間半近く。終わりよければすべてよし……ということにしておこう。

 個人的なハイライトは、なぎらさんが長年愛用してきたというマーティンD-35を爪弾いた瞬間だった。とにかく圧倒的な音圧で! D-35からこれほどドスの利いたベース音が跳び出してくるとは思ってもいなかった。

Nagira

 このシングル盤には、同じギターのほぼ新品の頃の写真がある。40年の歳月がどれだけこの楽器に風格を与えたことか。

2015年6月15日 (月)

昼飯前のひと仕事(ギターの試奏)

 午前9時頃から、Webのストリーミング配信でBonarooフェスのライブ中継を見る。F&Sコピー・バンドのアールズ・オブ・レスターが演奏をしていた。そういえば、メンバーのジェリー・ダグラスさんにインタビューをしたのは去年の10月のことだったな。

 かつての名バンドを再現する試みがこのようにウケている現状には、正直複雑な思いもあるのだが、水をさすのも野暮というものだろう。海外のライブをリアルタイムで見ることのできる環境に感謝しつつ、ありがたく拝聴する。

 アールズ・オブ・レスターのあとには、いまをときめくパンチ・ブラザーズも出演するとか。このままず~っと見ていたいのはやまやまだったのだが、あいにく仕事が入っている。小川町のシンコー・ミュージックで、ギターの試奏をしなくてはいけない。後ろ髪を引かれつつ、10時には家を出た。

 本日の作業は、ラリビーのギター4本のチェック。先日のジャン・ラリビーさんのインタビューにからんだ仕事だ。新作の40シリーズ2本と、華麗なインレイ・ワークの入ったカスタム・ギターが2本。後者の2本は、従来のラリビーのイメージを受け継ぐ、バランスのとれたきらびやかな音色のギターだったが、40シリーズのほうはそれとは大きくキャラクターが異なっていた。なにしろラリビーさん本人が、「ブルーグラス・ギターを作った」と言ってたくらいだものね。

 --なんて聞いて興味を持たれたブルーグラス・プレイヤーもいらっしゃるかもしれないけれど、残念ながらここでは詳しく書けないので、気になる方は7月発売予定の『アコースティック・ギター・ブック』をよろしく(こればっかし^^;)。

Larriveehead2

 せめてものおわびに、取材のメモ用に撮ったカスタム・ギターのヘッドの写真を1枚だけ貼り付けておく。貝細工のインレイで描かれているのは、タツノオトシゴに乗った人魚だ。現在のラリビーは、こうしたカスタム・インレイのギターに、再び力を入れ始めたそうな。ラリビーはやっぱりこうじゃないとね。

2015年6月 9日 (火)

伝説の巨人とお会いしたら……

 最初にインタビューをお願いするため電話をかけたときに、全面的にウェルカムというか、むしろあちらのほうが積極的に会いたいと思ってらっしゃるかのような対応で驚かされたのだが、実際にお会いしてみたら、そのときの印象以上の歓迎ムードで、のっけからハッピーな気分にさせられた。

 細野晴臣、大瀧詠一、高田渡、あがた森魚、鈴木慶一、矢野顕子など、数々の著名なアーティストを世に出し、サポートを続けてきた伝説のプロデューサー、三浦光紀さん。高校生の頃から今日に至るまで、ず~っと愛聴してきたレコードやCDも、この人の存在がなければ生まれ得なかったかもしれないと思えば、実際にお会いするだけでも感慨深いというのに、この下へも置かぬ歓待はなんだろう?

 6月8日午後2時。吉祥寺駅の近くで待ち合わせ。喫茶店の席に座わるやいなや、拙著を褒めちぎってくださった上に、その本にサインがほしいとおっしゃる。わざわざそのために持ってきてくださったのだ! 本来なら私のほうがサインをしていただくべき立場なのに……。ただただ恐れ入るしかない。このペースで高田渡さんや矢野顕子さんもぐいぐいとのせられたのかもしれないな、なんてことを考えた。引き合いに出すのも申し訳ない話ではあるのだけれど……。

 1、2時間お話をうかがえればと考えていたところ、話が始まったら一気呵成に3時間半。それから「ちょっと早いけど食事にでも行きましょう」と誘われ(ご馳走してくださるつもりだったようだ)、さらに居酒屋トークを2時間半。耳寄りな話をたっぷりと聞かせていただいた。それにしても初対面のあやしげな物書き^^;に、こんなに包み隠さず何でもしゃべってしまってよいものだろうか……とよけいな心配。いや、そういう人だからこそ、これだけのプロジェクトを動かしてこられたのかもしれないな。

 かくして6時間のロング・インタビューは無事終了。まだ聴き足りない分は、後日またあらためてということにさせていただく。別れ際に「今度Robinさんの演奏聴かせてくださいよ」なんてお愛想まで言われた。若きミュージシャンの卵なら有頂天になるところだろうけれど、あいにくこちらはトウの立ったライターだからねぇ……。

2015年6月 7日 (日)

運動会に追われて上野公園

 家の隣の中学校は、本日運動会。暑くも寒くもなく日差しもさわやかと、天候にめぐまれたのはご同慶の至りだが、家でくつろいですごすには、やはりうるさい^^;

 そういえば今日は、上野公園の不忍池水上音楽堂で、ノルディック&ケルティック・ミュージック・パーティなるイベントが開催されるはずだ。入場無料でもあることだし、ここはそちらに避難しよう。てなわけで、てくてくと散歩がてら上野まで歩くことにした。

 思いのほか時間がかかり、会場に到着したときには、もうハンマー・ダルシマーの小松崎健さんたちのセットが始まっていた。そんなこんなで、私が見た中では、フルート・トリオのトライフルと、フィドルとアコーディオンのデュオの「あんじょん」が、とくにリズムが立っていてよかったような。

Nordic2

 とくにトライフルは、ほとんどフルート3人だけで(ギターがサポートで入ってはいたものの)心地よいグルーブが生まれていたのが素晴らしい。

Nordic3

 あんじょんのフィドルは、ジョン・ジョン・フェスティバルでおなじみの大久保真奈さん。ピアノ・アコーディオンの方もどこかで見たような……と思ったら、トリニテのバイオリニスト、壷井彰久さんとアイリッシュのトリオをやっている藤野由佳さんじゃないか! 隣の運動会のおかげで、いいもの聴けちゃった。

2015年6月 6日 (土)

ダンジョン探検

 そろそろ梅雨入りを予感させる、どんよりと曇った肌寒いくらいの一日。仕事をサボって、御茶ノ水の書店兼雑貨店、ヴィレッジ・ヴァンガードへ出かけた。

 裏通りの雑居ビルに、ぽっかりと開けられた地下室へと続く階段(お店のサイトにあった写真を無断で拝借して^^;下に貼り付けておく)。書店というよりは、ライブハウスの入り口のような雰囲気だが、勇気を奮って螺旋階段を下りて行くと、そこには異空間が広がっていた。

Vv

 迷路のようになった店舗には、さまざまな商品が雑然と積み上げられている。書籍、コミック、Tシャツ、カバン、ナップザック、文具、生活雑貨、食品、スターウォーズやディズニーや円谷プロ関連のグッズ、フィギュア……などなど。カテゴリーを示すような表示はとくにない。商品の間を抜けていくと、いきなり景色が変わって、新たな商品群に出くわす。書籍も例外ではなく、店のあちこちに分散していて、出くわすたびにわくわくさせられた。まるでRPGのダンジョンを探検しているような気分だ。おまけに、そこかしこでさまざまなBGMが流れたり、アニメの音声が聞こえたり、エキゾチックなアロマの香りが漂ってきたり。いいぞ~!

 地下の部屋は思いのほか広くて、もしかしたらすべてを回りきれなかったかもしれない。書籍の品揃えはわりと私好みだったし、音楽書も(かなりの偏りはあるものの)そこそこ充実していたし、近いうちにまた来よう。

2015年6月 1日 (月)

渋谷のライブでマラカスをゲット!

 フレンチ・ポップスのシンガーソングライターで、俳優でもあるセルジュ・ゲンズブールのアルバムに、キャベツ頭の男が出てくるものがある。これにちなんで……と言っていいものか、フランスでアルバムを出す際にレーベルの社長から、「お前はスシ頭の男でいこう」と言われたのだそうな。そんなこんなでこの日のサエキけんぞうさんは、海老の握り寿司の被り物をつけてステージに現われた。どこからどう見てもバカである(もちろん誉めてます^^;)。

 5月31日土曜日。ところは渋谷のラスト・ワルツ。フレンチ・ポップスのサエキけんぞう&クラブ・ジュテームと、アコースティック・トリオのshiro、さらにふたりパール兄弟(サエキけんぞう、窪田晴男)という不思議な取り合わせのライブが開かれた。サエキ、窪田のご両人が、それぞれ関わっているユニットを招いた、パール兄弟の同窓会的ライブだったと言ってもいいかも。

 トップのふたりパール兄弟は、窪田さんのアコースティック・ギター1本だけを伴奏にさらりと3曲。もしかしたらトークのほうが長いくらいだったかもしれないけれど、この掛け合い漫才がなかなかに面白く、つかみとしては上々のすべりだし。役者やの~。

 shiroはおなじみのオリジナル曲を中心に。1曲だけ、ローリング・ストーンズの「Wild Hoses」を日本語歌詞付きでカバーしたのもよかった。以前から取り上げていた曲だそうだけれど、私は初体験。2本のギターが丁々発止と火花を散らし合う間奏のインプロビゼーション・パートも盛り上がった。欲を言えば、日本語の歌詞をもうちょっと長く聴きたかったかも。

 サエキけんぞう&クラブ・ジュテームは、ギター、ピアノ、エレクトリック・ベース、カホンというほぼロック・バンドな編成に、ピアノ・アコーディオンがフレンチ・ポップスのスパイスを加える。個人的にはこのアコーディオンがおおいに気に入った。ゲンズブールの曲を中心に、ミッシェル・ポルナレフも1曲、さらにオリジナル曲もあったけれど、歌詞は全編ほぼ日本語。これがかなり猥雑かつ皮肉っぽく、おまけにいい具合に屈折していて面白かった。

 後半にはステージからマラカス型のシェーカーを配って、観客にも演奏に参加させる演出あり。ちょーだいちょーだいと手を出したら、うまいぐあいに投げてもらえたので、これをキャッチしてシャkシャカふりまくったのだ。返さなくてもいいそうで、ラッキー。そのまま持ち帰ったから、その写真を貼り付けておく。

Dsc07844

 エンディングはshiroのメンバーも加えてのセッションに。サエキさんと宮原芽映さんのデュエットが、けっこうやらしくてドキドキしたよと。

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