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2012年8月23日 (木)

12フレット? それとも14フレット?

 熱心なマーティン・ファンなら先刻ご承知だろうが、マーティンのギターには、同じサイズ名が付いていながらボディのデザインが異なるモデルが存在する。

 たとえば同じ000(オーディトリアム)でも、ネックとボディが12フレットのところで接続されている12フレット・ジョイントのモデルと、14フレットのところで接続されている14フレット・ジョイントのモデルの2種類がある。

Compare

 結論から書いてしまうと、実は12フレット・ジョイントのほうが古いデザインなのだ。14フレット・ジョイントのモデルが新たに登場した背景には、ジャズの流行やフラットピッキング奏法の普及など、さまざまな事情がからんでいたと思われる。その最初の試作品が完成したのが1929年の7月末、あるいは8月初頭頃。当時絶大なる人気を誇っていた4弦バンジョー兼ギター・プレイヤー、ペリー・ベクテルのアイデアに基づいてマーティン社が新しいボディを設計した。

 ベクテルの要望は、以下のようなものだったという。

  1)000-28をベースにした14フレット・ジョイントのボディ
  2)(ベクテルが愛用していた)ギブソン・スタイルOと同等の指板の幅&グリップの形状
  3)ピッキングの傷がつかないようにするためのピックガード

 こうして生まれたギターが、OM-28ということになるのだが、このOMは「オーケストラ・モデル」の略称で、本来はスタンダードな12フレット・ジョイントのモデルと14フレット・ジョイントのモデルとを区別するために、新たに作られた用語だった。つまり、000や00はもちろん、D(ドレッドノート)でも当初は12フレット・ジョイントがスタンダードで、14フレット・ジョイントのドレッドノートも、当初はオーケストラ・モデルに分類されていたのだ。

 モデル名としてのOMは33年でいったんとだえ、その後は14フレット・ジョイントの000がこれを引き継いだ。000はOMを経由して12フレットから14フレットに生まれ変わったと解釈してもいい。000とOMの関係について詳しく説明しようとすると、かなりややこしい話になるのだが、大まかな捉え方としては、「OMは14フレット000のバリエーション」という程度の解釈でいいと思う。スケールの長さがどうのこうのなどと言い出すと、どつぼにはまりかねないので……。

 余談ながら、ここまでの経緯でわかるように、OMはもともとフラットピッキング用のギターとして開発されたモデルである。いつの間にかフィンガーピッキング専用のギターのようなイメージが定着してしまったのは、実に興味深い。

 --というところで、上の写真は、左が12フレット・ジョイントの000-28、右が14フレット・ジョイントの000-18。2フレット分のスペースを稼ぐため、ボディの長さが1・1/16インチ短くなっているだけでなく、ボディ・シェープ自体も変更され、上半身(アッパーバウト)が横に広がっている。また、ボディの容量を稼ぐために、胴の深さも1/16インチ増している。

00028t2m

 この12フレット000-28は、正確には000-28GE。GEは「ゴールデン・エラ(黄金時代)」の略で、かつての名器の復刻モデルに当たる。このモデルは1996年のみの限定生産で、全部で367本製作されたという。

 ピラミッド・ブリッジ、スロテッドヘッド、ヘリンボーン・トリム、ダイヤモンドスクエアのポジションマークなど、20年代のデザインを忠実に再現している。唯一ピックガードは時代的にそぐわないのだが、これでオリジナルである。ピックガードがなく、より原型に近い製品(モデル名は同じ)も同時に作られた。

 ネックもビンテージのモデルを意識してかなり太めだが、弾きにくいというほどのことはない。何よりも、12フレット・ジョイントのボディは響きが豊かで、とても美しい音がする。余裕があったら、0や00の12フレット・ジョイントのモデルもほしいんだけどな……。

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