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2012年6月27日 (水)

暗闇の騎士の回顧録

 アメリカン・コミックの影響を受けた日本の漫画家は少なくない。あまり指摘されることはないようだけれど、実は水木しげるもそんな1人だったのではないか。

 映画「ダークナイト」をテレビの洋画劇場で見て、またバットマンのコミックを読み返したくなり、書庫を探しているうちに、あらためてそんな思いに囚われてしまった。

 たとえば、バットマンの50年の歩みを1冊にまとめたハードカバー「THE GREATEST BATMAN STORIES EVER TOLD」(1989 近代映画社)の裏表紙はこうだ。

Batman5

 マントのひだが作る影の処理、目だけ白く光る黒い顔。コントラストを強調したそのタッチは、驚くほど初期の水木しげるの絵柄に似ている。おどろおどろしいアメリカン・ゴシック・ホラーの世界観が、日本の妖怪漫画に影響を与えていたとすれば、ちょっとした事件である。

 とはいえ、それをいまゆっくり考察している余裕はない。バットマンのコミックを探すのが当初の目的だったはずだ。

 上記のハードカバーは、バットマンの版元、DCコミックス社が、バットマン生誕50周年の記念に出版した傑作選の日本版で、1939年に発表された1作めから、83年のブルース・ウェインの回顧録(バットマンの結婚のエピソードが語られる)まで、26本の作品を集めてある。主要なキャラやエピソードはほとんど網羅されていて、これ1冊でバットマンの50年の歴史を概括できるのがうれしい。

 50年の間には描き手もずいぶん変わったけれど、まとめて一気に読むと、やはりニール・アダムス以前と以後でガラリと画風が変わっている印象を受ける。いささかトホホなSF路線に迷い込んでいたバットマンを、原点の怪しい闇の世界に連れ戻し、さらにアダルトな魅力を加えたアダムスの功績は大きい。

 そのアダムスとニール・ジョルダーノが作画を担当した「HALF AN EVIL」(1971)は、敵役の1人、トゥーフェイスのキャラクターがよくわかるエピソードだが、これは映画「ダークナイト」の元ネタの1つと言えるのではないか。

 たとえば、このピエロの強盗団のビジュアル・イメージは、そのまま映画の冒頭にも活かされていた。

Batman6

 トゥーフェイス誕生のいきさつは、少し原作とは異なるが、善と悪の2つの側面を持つキャラクター設定はそのままだ。

Batman7

 それはいいとして、この本に収められたニール・アダムスさんの作品は、ゴシック・ホラー色が薄いのがちょっぴり不満。やっぱりこの人は、こういう怖くてきれいで色っぽい女の人を描いてくれないとね^^;

Batman8

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