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2012年6月21日 (木)

テレキャスターからストラトキャスターへ

 フェンダーのエレクトリック・ギターには、「機能美」という言葉が一番しっくりくるような気がする。極限まで無駄をそぎ落とした工業製品の美しさと言ってもいい。

 1950年に発表されたブロードキャスター(後にテレキャスターと改名)には、従来のギターの概念をくつがえすような斬新なアイデアが、たくさん盛り込まれていた。

・ボディは音を響かせるための空間を持たない単なる1枚の板

・カッタウェイを施してハイポジションを弾きやすくしたボディ・シェープ

・ピックアップ・システムや配線をセットするための溝をボディ・トップに設け、これを大きなピックガードで隠す

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・フィンガーボードのない1ピースのネックに直接フレットを打ち込む(上の写真は後年開発されたローズウッド・フィンガーボード仕様のタイプ)

・木工技術を持たない作業員でも組み立て可能な(そして不具合が見つかったときに簡単に取り替えられる)ボルト留めのデタッチャブル・ネック

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 こうした一連のアイデアに共通するのは、職人の技術に頼らず、なるべく作業の手間をはぶいて、生産効率を上げようとする工夫と言っていい。ラインで生産される工業製品の発想に近い。極力装飾を省いたシンプルなデザインも同様の思想に基づくものだろう。機能美の極致のようなテレキャスターはこうして誕生した。

 テレキャスターでソリッド・エレクトリック・ギターの時代を切り開いたレオ・フェンダーは、この発想を押し進め、さらに新たな機能を盛り込んだギターを開発する。これが今日に至るまでエレクトリック・ギターの頂点に君臨し続ける名器、ストラトキャスターだ。

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 ストラトキャスターは54年に発表された。これはその年に製作されたモデルだが、赤い塗装のボディはリフィニッシュと思われる。

 新たに開発された3つのピックアップとコントロールのつまみは、すべて大きなピックガードに直接マウントされている。より生産効率を上げるためのアイデアだろう。

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 ストラトキャスターの最大の特徴と言えるのが、バーの操作でスムーズに音程を変化させることのできるシンクロナイズド・トレモロ・ユニットだ。またブリッジサドルは、それぞれの弦ごとにオクターブ調整が可能なように、独立して動かせる構造になっている。

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 プレイヤーの身体にフィットするようにボディ裏を斜めにカットしたコンター・ボディ(これも当時としては画期的なアイデア)。よりハイポジションが弾きやすい深めのカッタウェイも、ストラトキャスターの特徴の1つだ。

 おまけにオリジナルと思われるツイード・ケースもご紹介。かなりボロボロになっていて、きれいにするには全面張り替えしかなさそうだ。まあ、やらんけど……。

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 内装はなかなかにハイグレードな質感。発売当初から高級感のあるモデルだったということか。

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