「アナタのロジックは正しいけれど心がない」--映画「アイ、ロボット」(2004年)のクライマックス・シーンで、ほぼ主役と言ってもいいロボットの「サニー」が、人類を自らの支配下におこうとするバイオ・コンピュータVIKIに向けて放ったセリフだ。
冷徹なロジックと、ヒューマニズムというヤツは、どうも相容れないものであるらしい。
もっとも「アイ、ロボット」のVIKIの論理は、「滅びの道を歩む人類を救うにはこれを管理するしかない」という、サニーにつっこまれるのも無理はないような、いろいろな意味で乱暴きわまるものだった。
これが「バイオハザード」(2002年)になると、困ったことに、レッド・クイーン(赤の女王)という名のコンピュータは、常に誰よりも最適な意思決定をしていたように思える。人間をリビング・デッド(ゾンビ)化するTウィルスの蔓延を防ぐため、速やかに研究所を封鎖した処置しかり。発病の可能性がある感染者を殺処分させようとする選択しかり。
ところが、こうしたレッド・クイーンの論理は、ヒューマニズムに反するが故に登場人物たちの反発を招き、憎悪の対象とされて、最終的に彼女は破壊されてしまう。こうした人間側の努力のおかげで、封じ込められていたTウィルスが世界に広まり、人類が滅亡へと向かったのは皮肉な結末と言わざるを得ない。
こうして見ると人間は、必ずしも合理的な結論を歓迎するとは限らないようだ。もちろんドラマツルギーのために、人間に対立する存在として冷たい論理をふりかざすコンピュータを、ことさらに強調している側面も否定はできない。とはいえ現実の社会でも、正しい論理が生み出した結論が受け入れがたいものであることは少なくないのだ。
たとえば放射性物質の汚染対策を例にとっても、汚染の拡大を防ぐことを第一義に考えれば、福島の特定地域(かなり広範囲に及ぶものと思われる)を長期間立ち入り禁止区域とし、除染はあきらめて、ここに汚染した土壌や瓦礫の焼却灰を含む放射性物質の保管所を設けるのが正解かもしれない。コンピュータに任せればこういう結論を出すかもしれないけれど、はたしてその冷徹な論理を我々は受け入れることができるかどうか。
少なくとも私は、こんなことを公言する勇気はないな。失うべき地位も名誉もない私のような人間でも、人でなしのコンピュータみたいに思われるのはイヤだもの。
今月発売のムック「ヴィンテージ・マーティン ゴールデン・エラのきらめき」(シンコーミュージック)に、私が以前書いた原稿が再録されているのでご紹介。
そのものズバリ「MARTIN HISTORY」というマーティン社の沿革をまとめた記事で、モノクロ10ページ。そんなに古い原稿でもなかったはずなので、似たような雑誌にまた載せるのはどうかとも思ったのだが(ここだけの話、時間の余裕がなかったと見えて、ほぼ事後承諾のような形だった)、図版類が全部新しくなっていて、予想外に面白かった(自画自賛?)。やっぱレイアウトって大事だわ。
このほか、トニー・ライスさんとノーマン・ブレイクさんのインタビューも再録(再構成?)されていて、これもなかなかよかったな。ブレイクさんは、奥さんのナンシーさんと仲良く写真に収まってるし。
そんなこんなで、興味のある方は立ち読みでもしてやってくだせぇ。
ここしばらくmixiでひっそり日記を書いていたのだが、やけに使いにくくなってきたような気がするため、長いこと放ってあったこちらのブログを復活させることにした。新装開店ということで、どうぞごひいきに。
昨日(21日)は、横浜サムズアップで開催されたTOKYO BLUEGRRRRASSING 2012を見てきた。
ブルーグラスに関わりのある10組のアーティスト、バンドを集めたというこのコンサートは、今回が2回め。4時半開演、10時半終了ということで、タフでなければついていけない濃ゆいイベントではあったが、多彩な出演者のおかげで、最後まで元気に楽しむことができた。
ブルーグラスゆかりのアーティスト--といっても、ブルーグラス色はそれほど強くなく……。いやいや、はっきり言って、アイリッシュに、アコースティック・ジャズに、ロックに、ブルースに、Jポップに、お笑いに(!)……と、フツーにブルーグラスをやったバンドなんてほとんどなかったのだった。まあ、こっちもそれを期待して見に行ったので、もちろん文句を言う筋合いもない。諸手を上げて大歓迎。
個人的に気に入ったのは、オールド・ジャズやオリジナル曲を大人の魅力で聴かせるボーカル&ギターのデュオ、「ちくわぶ」。熱いロック魂を感じさせてくれた奥沢明雄&ママレードスカイ。ソニーからメジャー・デビューしたばかりのシンガーソングライター、斉藤ジョニー--あたり。若手ブルーグラス・バンドのブルーグラス・ポリスも元気があってよかったな。
惜しかったのは、ジョン・ジョン・フェスティバル。インスト面に関しては、日本のアイリッシュ・バンドのトップ・レベルではないかと思ったのだが、それに比して歌の落差が……。ともあれ、パーカッション奏者(あえてボーラン奏者とは書かない)に拍手。
TARO&山口美代子というマンドリンとドラムスのデュオも意欲的な演奏だったけれど、歌無しのインプロビゼーションで30分となると、何かもうひとつ工夫がほしいかも。
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